平均点というのは,要するに全員の得点を合算して,頭数で割った数字です。ひとりひとりを均等にならした点数ですね。
中学校の定期試験では一般に平均点が参考として提示されると思います。
試験というのはまぁおおよそ平均点が60点ぐらいになるようにつくられているんですね。なのでフツーは60点ぐらいをとるひとがいちばん多くなるような山を描いたグラフができると思います。
これが真ん中がいちばん少なくって左右に割れてしまうような山ができてしまったり,極端に右寄り(高得点寄り)の山ができてしまったりすると,試験の問題の質としてはどうなの?ということになったり,生徒の二極化(できるひとと,できないひとが真っ二つに分かれてしまって中間層がいなくなること)が進んでるなぁという評価になったりします。
まぁでも正直,この平均点というのは,個人レベルでみると参考にはなっても,それ以上は特に得るものはありません。「でどうなの?」という指標です。
平均点がいかほどだろうが,自分の点数は変わらないし,目安として「平均点」だけ与えられても,その中身(せめてみんなの得点のバラけ具合)がわからないとあんまり指標としても役に立ちません。自分がそれと比べて高いか低いかがわかっても,次の試験に影響を与えるようなものかどうかよくわかりません。
平均点なんなの。
しかし,けれども,みなさん。
いいですか。
平均点という言葉にはある種の魔力があります。なんとなく平均点=フツーと思っていたりはしないでしょうか。平均点を超えていれば,フツーよりは頭が良い。平均点を下回っていたらフツーより頭が悪い,こんなふうに思っていないでしょうか。
これこそが平均点の魔力です。
平均点を境界にして頭が良い悪いは決まりませんが(それどころかご承知のとおりテストの結果や学歴だけでも決まりません),なんとなくそんな気にさせてしまう魔法の指標,平均点。
そして,今回はこの平均点をとりあえず目標にしてしまおうというお話です。
平均点がどんな学校においても,得やすい情報であることに間違いありません。
だったらとりあえず平均点よりも低いところにいるみんなは,これを目標にしてしまうのは悪くないでしょう。
目標を持つということはモチベーションアップに直結するし,目指すところがあるとないとでは,行動に移すことができる確率が飛躍的にあがるからです。
だったら後でわかりやすく「目標を達成できたか,できなかったか」を判定しやすいように何かの得点を目標にしたほうがいいでしょう(こういうのを「定量的」な目標と言います。定量的な目標設定は,目標設定の基本です)。
というわけで今回は,平均点を超えるためにどうしたらいいかを何回かに分けてお話していこうと思います。
平均点を超えろ。
さぁここからは平均点よりも下にいるみんなに聞いて欲しい話です。
先に述べたとおり,テストって一般に60点ぐらいが平均点になるようにつくられているものなので,まぁ言ってみれば,学校の授業をしっかりと受けて,適度に復習や試験勉強を行えば,多くのひとが60点ぐらいはとれるだろうということです。
だから60点ぐらいまでは,そんな苦労せずに到達できると思って下さい。
じゃぁなんで僕たち私たちは60点とれないのでしょうか。
フツーに勉強しても60点に達しないひともいれば,まったく勉強してなくって60点とれなくて当たり前のひともいるでしょう。後者のひとは,勉強すればそれぐらいとれると思っているかもしれません。
前者のひとはちょっと困りましたね。
フツーに勉強しているのに,フツーにとれる60点がとれないのですから。
でも心配無用。
それは頭が悪いからでも,才能がないからでもありません。
基礎がしっかり固まっていないだけのことです。
勉強してなくて60点とれないひとも,このままでは基礎ができあがらないので,そのうち勉強を始めたとしてもしっかり基礎から始めないと,60点とれるようにはなりません。勉強時間だけ増えてもきっと簡単には成績はあがらないでしょう。
どうして基礎固めがそんなに大事なのか。
学習ってやっぱりピラミッドのように下から順番に積み上げていくものだからです。
こういうのを体系的に学ぶと言います。
一番下から順番に,いくつもの要素を学び,それらが組み合わさって次の段をつくるために必要な礎になります。2段目をしっかりと理解するためには,1段目がガッチリ出来上がっていなくては頑丈なピラミッドができません。
部分的とか,個別には2段目,3段目を積み重ねることはできるかもしれませんが,それではピラミッドはグラグラと不安定で,いつ壊れてもおかしくないものになってしまいます。まして,土台がまったくない部分にはそれ以上積み上げようがないのです。
平均点を目標にするということは,ピラミッド全体を60パーセントぐらいの完成度にしよかなーぐらいのことです。しかし60%の作り方にもいろいろあります。
僕が今から伝えようと想っている方法は,土台だけ超頑丈にできあがっているけれど,上がまだ積み上がっていなくってピラミッドとしては未完成だよーという60%です。
決して,土台が6割,2段目が3割,3段目が1割程度できあがっているフツーよりは高いピラミッドのことではありません。あるいは見た目は100%できあがってるふうだけど,中がスカスカで地震や竜巻がきたら全部トンでいっちゃうんじゃね?というようなピラミッドでもありません。
基礎という言葉を聞いてガッカリしたみんなは心して聞いてほしい。
本気で何かを達成したいと願うなら基礎をおろそかにすることは絶対にできない。
「3時間でできる!」「最下位から一発逆転合格!」「たったひとつの理由」なんて冠がついたお手軽,簡単に実力アップ!な広告たくさん見たことあると思います。
これらの知識や技術は,表面的,短期的に効果をあげるもので,学力の根幹を育てるものではありませんから,たとえ瞬間的にテストの点数があがったとしてもそれが持続的に発展することはありません。短期的に効果が高いもの,瞬発力がある方法も必要ですが,長期的に持続・発展するためには最初は「基礎」を時間をかけてしっかりと固めることこそが重要なんですね。
誤解して欲しくないのは,スキルやテクニックなど,表面的な効果をあげる方法が無駄とか無意味だとかということではなく,土台と装飾の両者をバランス良く身につけることで目標達成を強固にするということです。
しかしどうしたって基礎をおろそかにすることはできません。
それがいかに地味で,簡単でなくて,たいへんで,辛い努力だとしてもこれを飛ばして利益だけ得ることはできません。
種をまかずに,稲を刈ることは道理に反するのです。
種を蒔いて,しっかりと水をやり,大事に育ててやがて実らせる。土を育て,毎日気に掛けてやって,手間暇をかけてじっくりと育てるのです。
効率なんて都合の良い言葉に振り回される必要はありません。
効率というのは,土台が出来上がって,さらに上を目指す人がこれまでやってきた経験や努力を元に創意工夫をして,凝縮し,無駄を省き,利益を最大にできるようにするものですから,最初は地道に土台を高めるのが結局いちばん近道なのです。
ドリブル練習しなくて難しいシュート練習だけしても試合には役に立ちません。
ナイフで皮むきができないのに,難しいフランス料理のレシピがあっても大した料理はできません。
トメやハライの練習をせずに,美しい書は書けません。
デッサンやパースを繰り返したくさんこなさずに,粋な油絵が描けるはずがありません。
逆上がりのコツをつかまずに,二段平行棒は危険です。
基礎をおろそかにして,大成するものは一つもないと断言しましょう。
だから平均点を目指すのに,一番最初に取り組むのは基礎固めです。
当たり前のことだからこそ,結局みんなはこれまで取り組んできていないのでしょう。めんどくさくて,難しくって,ちょっと試してマスターした気になっているか,反対に最初が難しくって諦めてしまったか,とにかく基礎固めを継続してこなかったことが,平均点を超えられない理由なのです。
その2に続く。