自立というのはすなわち,主体性をもって生きることですから,これをお子さんに求める以上,我々は子どもたちに対して自分の思い通りに動いて欲しいという考え方を改める必要があります。
一方で,子どもはまだその判断能力がないとか,責任は結局親がとらなくちゃいけないとか,そういうことはありますし,命の危険にさらされている我が子を放っておくことはできないので,そういう場合には怒鳴り散らしてでも,力尽くででも,言うことを聞かせる必要はあるかもしれません。
しかしそうでなければ,「自分で考えて,自分で決断し,その結果に責任を持つ」という自立のプロセスを邪魔しないことは,自立をして欲しいと願うこととセットで行いたいところなのですが,けれどもやっぱりというか,どうしてもというか,親の目から見れば子どもたちの言動にはまだまだ幼く,自立とはほど遠い選択を行うことも多々あり,その都度「修正」を強いることになってしまいがちです。そうすると,強制的な修正や指示は,自立を願うことと矛盾しますから,これを求められる子どもたちからすればたいへんな混乱をしてしまうのです。
では黙ってみていればよいかというと,その通り!黙っていればよいのですが,しかしこれを実行することは容易ではありません。みなさんも胸に手をあてて考えてみてもらえればよくわかると思います。
朝起きるところから,夜寝るまでの間,一体何回子どもたちに対して注意や指示をしていることでしょうか。
一説では,日本の子どもたちは1度褒められるために11回は叱られなくてはいけないそうです。そのぐらい褒めるよりも叱ることの割合が多いのだそうです。そして,これを1度も叱ったり,注意したりすることなく,本人が決めたことを,そのまま受け止めてあげなくてはならないとすれば,それはそれはたいへんな覚悟が必要でしょう。
口を出さないための3つの約束
一つ,子どもの自力を信じること。お子さん自身が,お子さん自身のチカラで,その目的に向かって適切な言動をすることを信じて待つこと。
二つ,お父さんお母さんの気持ちを伝えることは大切なことです。心配しているのだということ,これからどうしていこうと考えているのか知りたいと思っていること,などは率直に伝えて,しっかりと話し合いをしましょう。
三つ,そのうえで,合意が取れたことは必ず守ること。お父さんがお母さんが決めたことが守れないとすれば,お子さんも同様に守れなくなるでしょう。反対に,合意形成を経て,なおお子さんが約束を守らないとすれば,その結果はしっかりとお子さんが受け止めるべきことです。論理的な結末をしっかりと受け入れることをお父さんお母さんは,嫌味なく,罰するでもなく,迎えてあげてください。
もちろん一つ目がもっとも重要ですが,ポイントになるのは二つ目と三つ目です。
二つ目では,合意形成を重視しています。お子さんをひとりの同じ人間とみて,同等の立場で合意形成を図ります。合意形成は2者の合意でできあがっているものであり,一方の自由にはできないものであることをしっかりと認識してもらうことが大事です。
逆に言えば,お子さんの言動に対して何も言ってはいけないということではなく,ご両親の気持ちを伝えて,相談することはできるということですね。助言や指示,提案ではなく,相談や自分の気持ちを伝えることは,率直で真摯な思いである限り,素直に聞いてもらえる可能性は高いと思います。
三つ目はちょっと難しいのですが,たとえば,傘を持たずに外出するお子さんに,傘を持つようにとアドバイスした結果,お子さんが傘を持たずに出かけることを決断したうえで,雨に降られたとするならば,お子さんは雨に濡れて帰ることが論理的な結末です。先んじて,傘を届けたり,車で迎えに行ったり,反対に「ほらごらんなさい,傘を持って行きなさいっていったでしょ。」のような嫌味や,罰を与えるのではなく,ただ「たいへんだったわね,先にお風呂に入る?」のように普通に接することです)