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ミライデザインラボ

室長ブログ

シュウカンデザインラボ ― 学習習慣 をデザインする―中高生向けに学習習慣を定着を考えてみた。

学習習慣 の定着をサポートする
コーチング学習塾ミライデザインラボ

学習習慣 を考える。

新しい習慣は簡単には身に付きません。
なぜかと言うと,ひとは三日坊主になるように生まれてきているからです。これは決して冗談でも,嘘でも,適当なことを言っているわけでもありません。ある意味で本当のことです。

しかし,ラボでは「学習習慣をデザインする」を合言葉に学習の習慣化を成立させ,三日坊主にならないための秘策を編み出しました。その秘策とは,

がんばって4日目までやる!

これです。
4日目までがんばってやり切れば,少なくとも三日坊主だけは防げたことになります。

はい。もちろん冗談です。
これは冗談なのですが,しかし,三日坊主を打ち破る秘訣は必ずあります。習慣化のコツは本当にちょっとしたことなのです。

本文の中で詳しく解説しますが,ひとの脳はそもそも新しい習慣をすぐに身に付けるようなシステムになっていません。つまり,習慣化しないのは,あるいは反対に悪い習慣を断ち切れないのは,そのひとの意志が弱いとか,根性がないとか,やる気がないといった精神論では語れないものです。

これはすなわち,意志やモチベーションのチカラに頼って習慣を作ることの難しさを意味します。同時に,これらに頼らない方法であれば,習慣を身に付けやすいということでもあります。意志やモチベーションに頼らない新しい習慣を定着させるためのコツを見つけられれば,きっと学習習慣も自然に身に付きます。

ラボでは,そのコツを少しずつ解説し,身に付けてもらうために習慣化サポートをはじめました。本稿ではその中で語られる一部を解説し,ワークにつなげて欲しいと思います。習慣化サポートに興味を感じてくださったら,まずはラボまでご相談ください。

ミライデザインラボコーチングコース(中高生対象)

専属コーチとの 1 on 1 ミーティングの中で学習習慣をどのようにして身に付けるかいっしょに考えます。それぞれの得意,不得意にあわせて,きめ細かなフォローアップと定期的なコーチングで習慣化支援をします。そのうえで,毎日ラボを訪れて少しずつ学習を重ね,気が付けばラボに通うことが当たり前に!

そのためには,毎日通えることと柔軟にスケジュールできるシステムが不可欠です。ミライデザインラボはサブスクリプション型「学び放題」を採用することでこれをクリアしました!
月額固定制度なのでいつ来ても,いつ帰っても,どれだけ居ても授業料は変わりません。

学習を習慣に。その過程は自分で考えて,自分で決める。
自分で決めたことは自分で責任を取ることができます。自分軸で生きること,他人の評価に惑わされず,誰の指示を受けるでもなく,自分の大切な価値観に従って人生を切り拓くチカラを身に付けます。

中学生 月額33,500円(税込),高校生 月額35,750円(税込)

学習においての最強は自学自習です。元来,学習塾や家庭教師のサポートは必要なときに求めるもので,学習はひとりで行うことが王道なのです。

自立的に学ぶ姿勢を身に付けた者は,自分の選択に自信と責任を持つことができます。
誰かに強制された学びから生まれるのは,他責と低い自己肯定感です。結果としてテストの平均点が10点あがったとしても中長期的に失うものに比べれば,とても費用対効果が高いとは言えないのだとラボは考えています。

―ただし,僕たちも提案はします。このやり方はどうかな?とかこんな方法があるよ,とかそういう案内や提案は関係性さえできあがっていればどんどんしていきます。本人が納得のうえでハードな習練を課したとすれば,それは相応の効果をあげるでしょう―

さて,ミライデザインラボは学習習慣のデザインをしっかりと考え,これを子どもたちに伝えていくために,習慣デザインに特化して考える「シュウカンデザインラボ」をはじめます。「シュウカンデザインラボ」では,学習習慣の定着をメインゴールとして,そのための基盤づくりとスキルの解説をしていきます。

そしてその実践の場としてミライデザインラボはあります。中学生,高校生のみなさんは,できれば受験を実感する前に来てください。一度身に付いてしまえば,あとは自分でできますから,たとえばそこでラボを卒業してスポット的に家庭教師や学習塾,受験対策などで補完してもらえればよいと思います(もちろん高校を卒業するまで通ってもらえたら一番うれしいのですが,そのような選択肢もあるということです)。

繰り返しますが,学習は自分でするものです。
教えてもらうという受動的な学習ではなく,能動的に教えてもらいに行くという姿勢に変えていかなくてはいけません。教えてもらいにいくためには,自分は今何に困っていて,何を求めているのか,結果としてどうなりたいか,どうあればいいのか,を把握している必要があります。そうでなければ教える側と教わる側の齟齬が生じますから,結局受動的な学びになってしまうからです。

もう一度だけ言います!
学習における最強は「自分で家庭学習」です。お金もかからないし,やりたいときにいつでもできます。自分の意志だけで,いつでもどこでもできてしまうのですから。そして,なにより選択的に行うことで,自信と責任を持つことができます。これが最強だと断言するいちばんの理由です。

学習習慣 とは何か。

では,学習習慣についてちょっと本気で考えてみたいと思います。

さて,そもそも習慣というのはどういうことでしょうか。
セオリーにしたがって,習慣を辞書で調べてみましょう。

しゅう‐かん〔シフクワン〕【習慣】 の解説
1.長い間繰り返し行ううちに、そうするのがきまりのようになったこと。「早寝早起きの習慣」
2.その国やその地方の人々のあいだで、普通に行われる物事のやり方。社会的なしきたり。ならわし。慣習。「盆暮れに贈り物をする習慣がある」
3.心理学で、学習によって後天的に獲得され、反復によって固定化された個人の行動様式。  [用法]習慣・[用法]慣習――「土地の習慣(慣習)に従う」「これまでの習慣(慣習)を破る」など、ならわし・しきたりの意では相通じて用いられる。◇「習慣」は「毎朝のジョギングを習慣にしている」「イスラム教徒の女性はベールをつける習慣がある」など、個人的な事柄にも、社会的な事柄にも使う。◇「慣習」は「村の慣習として、祭りの当番は持ち回りにする」「慣習法」など、社会的に行われているものをいう。◇類似の語「しきたり」「ならわし」は、「町のしきたり」「世のならわし」のように「慣習」とほぼ同じ意。

習慣(しゅうかん)の意味 – goo国語辞書

いずれにしても,「繰り返し行ううち」,「普通に行われる」,「反復によって固定化された」あたりが大事なキーワードのようですね。

ラボでは,学習習慣を「学習の無意識化」と考えています。
反復によって固定化され,いつしか意識しなくてもできる状態,

習慣化の究極は「朝,歯を磨くように学習する」ことです。
したがって,習慣化してしまえば,もう気合を入れたり,がんばろう!と無理矢理奮い立たせたり,やる気のスイッチをオンにしたり,あるいは誰かにスイッチを入れてもらったり必要はなくなります。

たとえば朝起きて顔を洗うのにいちいち「よーし!今から顔洗うぞーっ!!」などと気合を入れて洗うひとはいないように,習慣とは無意識に,行うのがさも当たり前のようなルーチンになってしまうことを指しているのです。

このように,習慣化してしまえば,モチベーションや根性に頼ることなく,無意識に学習することができるようになります。
無意識になんとなくやれるようになってしまえば,そんなに苦痛も感じずに,その行動を起こすことができてしまうのですから,こんなにおいしい話はないというものです。

技能獲得の4段階

別の角度から「無意識になんとなくやれる」を考えてみましょう。
ひとが技能を獲得するのには以下のような4段階があります。知らないうちにできちゃってる,無意識にやれちゃってる,というレベルまで達することができれば,それはすなわち習慣化が完成しているということでしょう。

  1. 無知の無知(知らないことを知らない)
  2. 無知の有知(知らないことに気が付く!できないことを知っている)
  3. 有知の有知(意識すればできる!やれることに気が付いている)
  4. 有知の無知(無意識にできる!やれていることに気が付いていない)

車の運転に例えるなら,お父さんやお母さんの運転する車の助手席なんかに乗っていて,運転するということを意識せずとも困らない,問題なく目的地までたどり着けるような状態「運転するという技術そのものを知らず,したがって自分が運転する技術を持っていないことにも気が付いていない」のが1番の無知の無知。

あるとき,車を運転してみたい!と思い立ったのはいいけれど,まてよ,私ったらどうやって運転すればいいのかわかんないわ,と気が付きます。そこでようやく「運転するという技術」に気が付き,自分が無知であることを知ります。これが2番の無知の有知です。

自分ができないことに気が付けば,勉強したり,練習したりして,その技術を修得しようと努力をすることができます。誰かに教えてもらったり,本を読んだりして,知識を増やしたりもするでしょう。そしてようやく車の運転を覚えますが,このとき,まだ「アクセルを踏むのも,ブレーキを踏むのも,左右を確認して,ウインカーをだすのも,ましてバックで駐車するのも」ひとつひとつ自身の動作を確認しつつ,恐る恐る運転する状態です。これが3番目の有知の有知,知っていることを意識している状態です。自分が運転できることを知っている,意識しているのです。

そして最後4番目の状態では,運転にも慣れ,いつしか無意識にアクセル,ブレーキを踏みつつ,ウインカーを出したり,あまつさえ前の車にクラクションをならしつつ,あぶないじゃん!と文句を言いながら,ハンドルをきって避ける,みたいな複雑な動作を無意識に行ってしまえるような状態。すなわち無知の無知,自分が運転できていることにすら気が付いていない。運転という技術や知識を意識しなくても,十分に運転できてしまうという完全に無意識化した状態になるわけです。

ここまでいってしまえば,習慣化されていると言ってよいですね。
学習も,家に帰ったら,なんとなーく机の前にすわって,なんとなーく演習問題を解いて,わからないところが出たときは気が付いたら参考書を開いていた,なんて自動化されていたら最高ですね。

学習習慣 を成立させるための3つの要素

習慣化に関係する要素は3つ。
古典的自己啓発書である「7つの習慣」(スティーブン・R・コヴィー著)では,①知識(何をするのか,なぜするのか),②スキル(どうやってするのか),③意欲(それをしたい)の3つの要素が重なり合うところが「習慣」であると定義しています。習慣を身に付けるには,これら3つの要素すべてが必要です。

また,スタンフォード大学のBJFogg博士は自身の提唱する「フォッグ行動モデル」を用いて,行動が起きるのは,MAP(モチベーション,アビリティ,プロンプト)が一定の条件を満たしたときだと述べています。

ラボではこれらを含め,いくつもの習慣化モデルを検証し,以下のようにまとめました。

①能力と環境は,行動にすみやかに行動に移し,継続できるかどうかを示すものです。学習習慣に照らせば,たとえば「英単語の学習を寝る前に毎日10分」という習慣を身に付けようと考えた時,そもそも英語が苦手なひとにとっては10分は長いと感じるかもしれず,それだけですでに継続に不安があるという点で能力を満たしていないと言えます。あるいは,ベッドの枕元にスマートフォンが置いてあれば,つい手に取ってしまう確率はあがるでしょうから,環境として行動を継続させることに不安が生まれる状況となります。こういった能力や環境が高ければ行動継続しやすく,すなわち習慣化が成功しやすいことを示します。

②の動機は,その行動を身に付けたいというモチベーションそのものを指します。あたりまえですがモチベーションが高ければ習慣化は成功しやすく,低ければ成功しにくいということです。一方でモチベーションはボラティリティが高く,アテになりません。みなさんも少し想像してみて欲しいのですが,モチベーションを単に「やる気」と言ったとき,これが簡単に増減することはおわかりでしょう。
ある時,ちょっといい話を聞いて試してみよう!と思った瞬間「やる気」は一気に上がります。しかし,準備を進めているうちになんだかめんどくさくなってきて「やる気」がいつの間にかしぼんでいるような経験はないでしょうか。

こんなふうに,ひとりでモチベーションをコントロールするのがおよそ難しいであろうことは,体感できると思います。ラボではこのモチベーションのコントロールをコーチングを用いて支援します。しかし,コーチングはモチベーションのコントロールを支えるものではありますが,それでもしかし自身の強い意志と自律が求められるので,この動機の要素は何かと不安材料にもなりがちだと覚えておいてください。

③のキッカケは習慣化をスタートさせるための”何か”です。なぜその習慣を身に付けたいと思うのか。その習慣を身に付けるといったい自分にとってどんな素晴らしいことが起こるのか。目的はあらゆる行動の源泉です。目的をしっかりと考え,腹落ちさせることが新しい習慣をスタートさせるためのもっとも重要なファクターであるとラボでは考えています。

なぜ,学習習慣 は定着しないのか。

習慣化の要素をご理解いただいたところで,今度はどうして学習が習慣化しないのかを考えてみましょう。

これはもうみんなで胸に手を当てて,日々を振り返ってみると簡単に想像がつくかもしれません。
習慣化に限らず,チャレンジや新しい試みは,安定したいという人間の現状維持欲求―現状維持のバイアスとか言います―に阻まれます。できない理由ややらずに済む理由を探し始めれば,キリがないからです。やらない理由はいくらでもつくれますし,いくらでも見つけることができます。それがあたかも合理的で正しい選択であるかのように説明することだってできてしまうのです。しかしその実,源泉は恐れか保身のどちらかです。

それこそが習慣化を困難にさせる最大の要因です。
変化を恐れず,現状維持はむしろマイナスと考えてください。現状維持ならプラスマイナスゼロだろ?と考えてしまうのは,まわりが成長すれば相対的に自分はマイナスになるという事実から目をそらしているだけです。そして社会は常に変化し続けています。変化の中で自分だけが現状に留まることはできません。どうせできないのなら,自ら進んで望む方向へ変化しましょう。

脳科学的なアプローチ

実は習慣化が難しい理由は,そもそも人間のもつシステムに由来するものでもあります。
脳科学の分野は,最近目まぐるしい発展を遂げています。その中でわかってきた様々なことがこれらをしっかりと説明している,つまり,脳の仕組みからして新しい習慣を身に付けることは,容易ではないのです。

人間の脳には約1000億個とも言われる無数の神経細胞があります。脳がいろんな情報を記憶したり処理したりできるのは,神経細胞同士がシナプスと呼ばれる神経回路を通じてつながっているからです。
このつながりの濃淡は,利用回数によって濃くなったり薄くなったりしますから,頻繁に利用することでその通路はさらに使いやすくスムーズな行き来ができるようになるのです。逆にほとんど使わない通路は,そのうちふさがってしまって使わなくなってしまいます。いったんふさがれば,また接続するのにエネルギーがかかりますから,再度使えるようにするには結構な苦労が伴うというわけです。

実は脳はその大きさの割に,体内で消費されるエネルギーの25%を消費すると言われています。
したがって,脳はエネルギー消費に敏感で,より効率的にエネルギーを消費をするような仕組みになっています。このため,前述したような「無駄にエネルギーを消費する経路」を避けるような性質があるのです。

つまり,頻繁に使っている経路は,より頻繁に利用し,あんまり使わない経路はどんどんと廃れていってやがて使わなくなってふさがってしまうということです。これが何を意味するかというと,ひとは学習したり経験を重ねたりすることで,たとえば考え方や感じ方,癖,行動パターン,あらゆるものが固定化されていき,言わばデフォルト経路を形成するということを意味します。デフォルトの経路は,学びはじめた当初まだデフォルト化されていないころはむしろ選択的にその経路を使っていたはずなのですが,いつの間にかオートマチックにその経路が選択されるようになったということです。

これが「習慣化される」ということですね。

逆に言えば,いったんデフォルト経路として位置づけられてしまえば,自動的,無意識に,オートマチックにその経路が選択されるようになってしまうため,今度はその習慣を別の習慣に切り替えたり,止めたり,あるいはふさがってしまった経路を習慣化させようとするには,相当な努力が必要になってしまうのです。

たとえば,家を出て「玄関のカギをかける」という動作は,初めてカギをかけるときは,鍵の形状や手の動かし方などを意識的に行っていたはずなのですが,心地よい一連の動作が身に付いてしまえば,無意識にそれらの動作が固定化,習慣化していきます。この時,脳の神経回路は同一の経路を意識して選択することなく,合理的,効率的に自動選択されているのです。カギをかけたかどうかを忘れてしまうのは,このためです。たとえばこの時,いつもと違う利き手でないほうの手でカギをかけてみるなどする場合は,自動経路ではなく,選択的な経路を使うことができるので,より記憶に残っているのです。

と同時に,習慣化されたその行為をあえて止めようと思っても,家を出たらほとんど無意識でカギをかけているのですから,簡単にはやめられず,意識して止めることをしなくてはなりません。それほど脳神経回路はエネルギー効率を重視して利用経路を決めているので,簡単には習慣化できませんし,逆に悪習慣をやめることも容易ではありません。

じゃぁどうやって 学習習慣 を身に付けるの?

じゃぁもう新しい習慣を身に付けるの無理じゃん。と思ったみなさん,そんなに焦らなくても大丈夫です。現に必要な習慣であれば,無意識に身に付けているようなものもたくさんあるはずです。コロナ禍で外にのみに行けなくなったお父さんが気が付いたら毎晩晩酌してたとか,家に帰ったらとりあえず冷蔵庫あけるようになっちゃったとか,新番組のドラマを見てたら,そのドラマ終わった後でも,つい毎週その時間になるとテレビを観ちゃうとか。

そうです。
新しい習慣を身に付ける条件を上手に設定してやれば,誰でも習慣化が可能です。先に述べた3つの要素をバランスよくつくってあげれば,自動的に習慣化することができます。

いちばん肝心なのは①の能力と環境です。このハードルを下げてやることで習慣が定着する可能性はぐっとあがります。②動機は先にも述べたとおり,安定せず簡単に増減してしまうので,高ければ高いほどいいという程度でOKです。無理矢理高めたり,高いところで維持することは基本的にひとりではできないと考えてください。だからこそのコーチングなのです。自分との約束だけでは折れやすいので,コーチとの約束でつなぎとめるのです。

では具体的にどうすればいいのか。
一番最初に考えて欲しいのはキッカケです。要素の中で最も重要な肝心なキッカケについてもう少し掘り下げましょう。

キッカケはモチベーションを増減させるものでもあります。偶発的な印象もあるでしょう。しかしここではキッカケは目的とダイレクトにつながっているものと考えてください。スタートさせるためのトリガーの大本をしっかりと考えてください。

ここではマインドマップを使っています。
多くの人が勘違いをしてしまうところなのですが,習慣化は目的ではありません。習慣化はツールであり,それを得ることはもっと大きな目的を達成するための手段でしかありません。したがって,学習習慣を身に付けたいと思うとき,その背景に何があるのかをしっかりと考えて欲しいのです。

あなたはどう在りたいのでしょうか。
どんなひとになりたい。どんな自分で在りたい。
どんなふうに社会へ貢献したいのか。周りのひとたちにどう関わりたいのか。

そういった人格形成に大きな影響を与えるであろう人生の目的,価値観が習慣化の背景にあるはずです。それを確認したうえで,短期的な目標を定めてください。この短期的な目標がすなわち最初の習慣となります。

コーチングでもこの部分をものすごく大事にします。
1度だけでなく,2度3度,何回でも確認しなおします。あなたの目的は何か?あなたにとって大事なことは何か?その習慣は,人生の目的に対してしっかりとつながっていますか?

そんなおおげさなー,と感じる人もいるかもしれません。学習習慣を身に付けたいと思って,まず人生の目的をってめんどくさー,と感じる人もいるでしょう。しかしそれでも人生の羅針盤である目的をしっかりともっていなければ,簡単に道を外れます。習慣化は微妙なバランスの下で成り立つものですから,まして自分を律してまで身に付けたい習慣はなおのこと成立は容易ではありません。

その証拠に,目的をはっきりさせず,目標を定めず,ただ惰性でなんとなく習慣化をスタートさせればあっという間に三日坊主まっしぐらですし,習慣化を求めることなく,ただその瞬間の欲求に身を任せればあっという間にそれは習慣化します。習慣化してしまえば修正には相当なエネルギーを必要とするでしょう。

あなたにとって本当に大事な習慣を身に付けることは,人生を変えることだと認識してください。

とは言え,普段から目的意識をもって何かにのぞむひとにとっては比較的簡単な準備です。あえて意識せずとも人生の羅針盤を持っていれば,そこに向かうためのツールをひとつ手に入れるのはむしろ喜びですらあるわけですから。

学習習慣 をデザインするための約束

それではしっかりと目的を定めたら,ゴール設定に入りましょう。ポイントは4つ。

学習習慣 をデザインする

まずは習慣化が成功する確率をあげるために設定するゴールは極力小さくします。能力と環境のハードルを可能な限り下げてあげるという意味ですね。先に示した行動モデルにおいても,能力と環境が高ければ,モチベーションが低くても習慣化が成功する可能性がぐっとあがりました。コントロールすべきは,能力と環境,すなわち成立させる習慣をより簡単なものに設定するのです。

そして簡単なゴールから小さな達成感を十分に感じてください。こんなの誰だってできるぜー!レベルでもOKです。モチベーションが高くなければ,能力と環境はミニマム設定が良いでしょう。
先の例に照らすのであれば,たとえば「毎日寝る前に英単語学習10分」に少しでも抵抗を感じたなら「5分」にするとか,「読むだけ」にするとか。

そしてより具体的に,可能な限り数値で行動を設定します。これが言わば短期的な目標となります。具体的でかつ数値化された目標の評価―定量評価―の方が定性評価よりも,一目瞭然でわかりやすいからです。そのチャレンジが成功したか失敗したか,どこに改善の余地があるのか?がわかりやすいということは,よくわからない曖昧としたままあやふやに維持されることがなくなります。

「英単語の勉強をがんばる」といった目標では,達成したかどうかも曖昧ですし,何をどうすればよかったのかもよくわかりません。したがって,可能な限り具体に,そして数値化したいところです。

そしてその小さな目標を毎日達成していくわけです。

次に環境を整えます。「英単語帳を枕元に常備するために1冊本屋でちょうどいいのを買ってきて,枕元に置く」とか「単語カードを創って枕元に置く」とか。能力と環境の値を上げられる方法は,やればやるほどいいです。学習習慣の定着を阻害する要因はいくらでもありますから,これをできるだけ取り除いてあげることが成功のポイントにもなりますね。

こんなふうに,3つの要素を上手にコントロールすることで,新しい習慣を身に付けることができるようになります。まぁ考えてみれば当たり前の話ですね。しかしこうやってあえて言語化し,理解をすすめることで確からしさみたいなものが自分の中で「なんとかやれそうな気が」的な自信が湧いてくるのを感じられるのではないでしょうか。

そして,それこそがキッカケであり,スタートダッシュを決めるモチベーションにもなるのです。

3つの要素を上手にコントロールすると言っても,モチベーションは無視なので,実質は能力と環境に焦点を当てて考えればOKです。先にも述べましたが,モチベーションはあてにならないし,完全にはコントロールできないので無視するのが合理的です。

また,コーチングでモチベーションに対して影響を当てることは可能なので,近しいひとにコーチを引き受けてもらえばより効果的に習慣化にアプローチできるでしょう。

ポイントの3つ目では,習慣化する対象を一度に複数設けないように言及しています。言うに及ばずですが,ひとつでも新しい習慣を身に付けるのは容易ではありません。複数ならなおのことです。焦らずに,ひとつずつ体得していく方が遠回りなようで近道です。一歩一歩着実に進んでいきましょう。

最後に,キッカケについて少しだけふれます。
キッカケは意図的に起こすことができるとは限りませんが,キッカケを意識することは重要です。習慣の背景である目的,目的を達成したときに得るものは何か,といったマクロな視点を持ち続けることがキッカケをつくり,モチベーションを増大させ,スタートダッシュと習慣の維持に大きく寄与してくれます。

キッカケは偶然に起こることもあります。キッカケ故に,突然にモチベーションを生み出してくれるのです。しかし,突発的なそれは簡単に消えてしまうものでもありますので,偶然に生まれたキッカケをつかって習慣化を図る場合はとりわけ丁寧にその気持ちが生まれた根源を探ってください。
多くの場合,それは自分の大切な価値観が生んだものです。自分の大切な価値観とその意味付けについて,しっかりと深堀りをしてください。なぜそれを身に付けたいのか。どんな経験がそう思わせるのか。その時,紐づいている価値観は何か?さらにその価値観がどんなことを意味するのか,具体的に自分の言葉で言語化してみてください。そうすることで習慣化へのアプローチをより力強く,より遠くへ運んでくれるでしょう(とは言え,このようなアプローチは,やはりひとりでは難しく,コーチとの対話の中で深掘りすることで理解を助けてもらえるでしょう。その意味でもコーチを持つことは重要なのです)。

さぁ,それでは,次の段落から実践編にまいりましょう。

習慣デザイン実践編 -小学校3年生の場合-

大目的から考えてみよう。

さて,それでは習慣のデザインを実践してみましょう。
モデルとして通塾生(小3男子)にお願いしてみました。
(今回は「学習習慣」にはこだわらず,身に付けたい習慣について考えています。)

最初に3つ約束をしました。

  1. 強制や誘導は一切しない
  2. 大目的から考えて「今週の目標」を設定する
  3. とにかく自分で決める

まずはマインドマップを使っていろいろと考え始めます。20分ぐらいフンフンと聴いていると,何度か気になるフレーズが出てきて,少し深堀してみるとどうやら彼が日ごろから思っていることにつきあたりました。

時間を無駄にするなとお父さんからよく言われていて,自分も時間を無駄にしたくないと思っているのだそうです。ところが「無駄な時間が楽しいとも思っていて,無駄にしたいのかしたくないのかよくわからない」とも思うのです。無駄な時間が楽しくて,もっとやりたい(無駄にしたい)と思うなんて,もしかしたら自分はダメなヤツなんじゃないかと感じているとも発言しました。

小学3年生でこんなふうに「時間を無駄にしたくない」「でも無駄にしたい」という2つの矛盾を抱えていることに”気が付いていること”自体が実はものすごいハイレベルなことなのですが,しかし逆にそれに気が付いているが故にできない自分はダメなんだ,という少しネガティブなところに落ちてしまっています。

なので,大目的は

「時間を大切にできるひとになりたい」としました。

大目的を達成するために,どうしたらよいかを考える。

続いて,大目的を達成するために,どうしたらよいかを考えていきました。
僕がよくやるのは「ざっくり」→「こまかく」,細かくなりすぎてイメージがわかなくなってきたら今度は逆に抽象化して「こまかく」→「ざっくり」に戻す,を繰り返しつつ,イメージを膨らませていって,目標たるいくつかのゴール(大目的からみれば通過点,マイルストーンとなります)をマインドマップに追加していきます。

学習習慣を身に付ける

さて,コーチングに限らずカウンセリングの工程ではビッグワードを細かく砕いていくこと(チャンクダウン)が基本です。「無駄な時間」「時間を無駄にする」とはどういうことか?―このような全体でコンセンサスがとれていそうな言葉とて,個々に解釈は異なります。大切な時間とそうでない時間,無駄にするという真意,そういったものを丁寧に分解していくことで,新たな気付きが生まれることも少なくありません―そして,もうひとつ「無駄な時間を費やすこと」は実は本人の希望でもあります。したがって,その希望の背景にも着目すると,その課題をクリアすることを阻害している要因が見つかるかもしれません。たとえば「時間を無駄に使うと,どんな良いことがありますか?」なんて聞いてみたりします。

そんなふうに話を進めていくと,どうやら「YouTube」の時間がものすごく多くて,かつ自分もそのことをすごく気にしていることがわかりました。以前に学校のプリントに「依存症」のことが書いてあり,依存症のひとによくある行動がいくつも自分にあてはまっていて,怖くなっているのだそうです。

そんなに怖いんならやめたらいいのに,って思いますよね。
依存症の怖さは,止めたくてもやめられないことにあるのですが,むしろ周りの人たちが本人の意志とか精神力でこれらを克服できると考えてしまうところに本当の恐ろしさがあります。

そんなことを話しながら,必要に応じてメモを書き,見える化することで聴き手だけでなく,話し手である本人の頭の中も次第にクリアになっていきます。これぞコーチングですね。

そして,今回はいちばん気になっているところをまずは習慣化していきます。今回の場合は,新しい習慣を身に付けるのではなくて,悪習慣をなくすことからスタートすることになってしまいました。習慣付けより悪習慣をなくすというトライのほうが正直言って難易度は高いので,コーチ的には「大丈夫かなー」という気持ちではあります。

身に付いた悪習慣をなくすのは,簡単ではありません。みなさんもこれがいかに難しいかよくご存じですよね。禁煙,禁酒,禁買い物,だいたい「禁」とつくと,やってみたくなるのが人情ですから,まして依存しかかっているものから離脱するなんて想像するだけで大変です。

今週の目標を決める。

今週の目標を決めるにあたっては,先のマインドマップや相談の結果として,ポイントをひとつに絞ります。今回は「時間を無駄にしないひと」になるために,まずもって「YouTube」を見るのを止めよう!ということを考えました。

他にも目的を達成するための方法は,無数にありますし,実際に彼が出したアイディアももっとたくさんありました。しかしこれを一度にやるのはハードルが上がり過ぎてしまうので,「習慣化デザインのための約束」に照らせば,いくらモチベーションが高かったとしても,スキルが低すぎて達成は困難でしょう。

したがって,モチベーションとキッカケの2つの要素が,不足する「アビリティ」をカバーできるレベルまで,「アビリティ」を下げてやることが重要です。

  • YouTubeを見るのを止めるのではなく,時間数を減らすという考え方
  • 逆に〇分までは見ても良い(見なくてはいけないではなく,”見ても良い”)と考える
  • iPadから距離をとる(YouTubeを見るための難易度をあげる)極論言えばiPadに触れられなくするとか,iPadを捨てるなどもあり得ます。
  • 制限時間になるとアラームがなるようにする
  • YouTubeを見ていて他のことに影響を与えるような場合は,他のことのスケジュールや約束を優先することを徹底し,YouTubeを優先してしまったとしてもその責任は自身でしっかりととる(これも極論ですが,YouTubeを見ていたせいで食事の時間に遅れた場合は「罰として」ではなく,食事時間が短縮されたり,片付けに間に合わなければ,自身の分だけは自分で洗うようにお願いするといったような大人としての対応をします。罰ではないというところが重要です。罰として行うのでは,強制的なものになってしまうので,あくまでも合理的な判断―子ども扱いしてフォローしてあげたりはしないという意味です―のもとで行います。)

今回のチャレンジでは,時間数をまずは減らすところに主眼を置くことと,日によってはついつい見てしまうような日があってもそれはそれでいいんだよ,大丈夫。次の日からまたやり直せばいんだよ,ということをしっかりと伝えました。

予定や計画はそのとおりにいかないものです。
そのとおりにいくほうが逆に怖いぐらいだと思ってください。まぁ大人だって計画倒れなんて当たり前ですから,子どもだって同じです。「子どもだから」できないなんてことはないのです。

なので,目標を立てて,計画を設計するという場合,うまくいかない「失敗ありき」であることをまずは念頭に置いてください。失敗はそこで終わりにしなければ失敗にはなりません。単なる通過点であり,そのデータは成功への足掛かりになるからです。あきらめなければ,計画は継続するのですから,3日坊主なんて最初から想定内で行う方がずっと合理的で生産的な考え方であると僕は断言しましょう!

5日目にまた一からやり直したらいいじゃないですか。

さて,そんなわけで今週の目標は,「YouTubeを見ない。」に決めました。

内容としては「時間数の削減」を念頭に置いていますが,本人のたっての希望で「見ない」と言い切りました。こうやって言い切り型で宣言することで,力強いモチベーションを与えることもできますし,モチベーションが高いからこそ,このような言葉が彼にとってしっくりきたのだろうと思います。

こういうときは,ぜひ口に出して「宣言」させてみてください。しっくりこないような言葉(つまり,本心で思っていない言葉)は,力強く出てこないので,もしそうならもう一度考えるところに戻りましょう。

さぁ,さっそく目標を大きく書いたものを一番よく見えるリビングの壁に貼ってみました。

目標を紙に書いて貼るだけで達成率は1.4倍ですし,紙に書いて貼るだけなんてお金もかかりませんから,もう貼らないという選択肢はありません。

やったもん勝ちです。

実践あるのみ!

コーチと約束。そして自分と約束。
毎日,紙に書いてあるのを目で見て確認。良い場所に貼れば無意識に確認できてGOODです。さぁ,一週間がんばりしょう。

SafariでYouTubeを見ているので,1週目と2週目はこの二つのアプリを使用している時間がめちゃくちゃたくさんあります。平均3時間もYouTubeを見てるって正直,衝撃でした。他にやることあるだろと突っ込みたくなる気持ちをぐっとこらえて,目標を立てました。

このとき,大事なことは「YouTubeを見ない」ことを目標化したので,ここでは「その代わりに何か違うものが増える」ことを前提としなくてはなりません。
つまり,YouTubeは見ないわ,テレビも見ないわ,ゲームもやらないわ,その代わりに勉強ばっかりするわ,なんてミラクルは想定してはいけないということです。

なので,違う娯楽に流れてしまうのはある程度想定しなくてはいけませんし,それを咎めたり,しかったりしてはいけません。まずは目標達成に焦点をあてましょう。

で,まぁいちばん右が,目標をもって過ごした週です。
見事にNetflixとドラクエに振られてますね。
いやでもこれはしかし想像以上の目標達成じゃあないでしょうか。なにしろ16時間も見ていたYouTubeをほとんどみてないんです。別の遊びに気持ちが動いただけと言いたい気持ちはゼロではありませんが,正直,これほど一気に減るとは思ってもみなかったというか,すごいなーというのが正直な感想でした。

振り返り

そしてもちろんいちばん大事なのは振り返りです。
1週間がんばってみたけれど,どうだったかな?といった振り返りからスタートし,うまくいったところ,うまくいかなかったところ,うまくいって自分をほめてあげられるところはたくさん出してもらいましょう。そのうえで,「さらにポイント」として,何がどうだったらさらによかったかな?と考えてもらいます。

注意して欲しいのは,振り返りはダメ出しではないということです。

できなかったことは,ダメだったことではなく,次へ繋げるチャンスポイントと理解してください。本人にもそのことについて何度も話をします。最初からうまくひとはいないのですから,うまくいかなかったところは「失敗」とするのではなく,このやり方ではうまくいかなかった,どのあたりに問題があったのだろうか?と問題点をできるだけ具体的に考えてもらい,結果として「うまくいかないやり方を見つけたのだ!」という理解に変換して,次へ繋げるのです。

そして最後に,再計画をし,あらたな目標を定めてもいいですし,引き続き同じ目標の精度を高めるということでもいいです。昨日よりも今日,今日よりも明日,少しずつアップデートされた自分になっていればそれでOKなのです。

そうして気が付けば,その少しのアップデートを繰り返し,積み重ね,最強になっているとまぁそういう理屈です。

結局のところ,コツコツと続けることがなによりも確かな結果を生み出すのですね。

まとめ

というわけで,「学習習慣をデザインする」と題しまして,ひととおりお話をさせてもらいました。習慣化するための理屈は実はそれほど難しくありませんが,やはり実践がなかなかたいへんなのはご承知のとおりです。習慣を身に付けるには,意志の力がやはり少なからず必要です。ここで述べてきましたスキルやテクニックはその意志の力を可能な限り少なく,なるべく負荷がかからないようにするためのものではありますが,意志の力がゼロでは実際にはうまくいかない,というのが本当のところでしょう。

意志の力というのは,人間にだけ備わっている強いチカラです。自律したひとであれば,一様に意志を備えていますから,まずは自分の力を信じて,一歩一歩確かに進んでいくことを決めてください。主体的に進むことを決めてしまえばあとは進むのみです。途中でくじけることもあるでしょう。三日坊主にもなるでしょう。それでもまた新たに一歩進む決意をしましょう。そのたびに,再度チャレンジすればよいのです。

気が付けば習慣が身に付いている。
ある時,オートマチックに学習をしてしまっている自分に気が付いて,びっくりしてみたいですね。

ぜひともみなさんも挑戦してみてください。
そして,これらの習慣化メソッドをさらに強固にするためには,支援者であるコーチをつけるのがいちばんです。ミライデザインラボのコーチングコースは,いっしょに習慣化を考え,実践をフォローアップしてくれる力強い味方を手に入れることができます。

ぜひぜひ,いちどラボにお越しいただいて,いっしょに学習習慣を身に付ける方法を考えていきましょう!

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