解説に一本の線が入ったとたん、「それなら分かる!」と思う。でも、自分で問題を解くと、その線が思いつかない。図形でそんな経験はありませんか。
補助線とは、考えやすくするために、自分で図に足す線です。すごいひらめきが必要に見えますが、まず練習したいのは「何のために線を引くか」を決めること。今回は、平均点前後から図形をもう少し得意にしたい人に向けて、見る順番を具体的に紹介します。
1 最初に「何を求めるか」を囲む
図を見る前に、問題の最後を読みます。求めるのは角度でしょうか。長さでしょうか。それとも、二つの三角形が合同であることの証明でしょうか。
角度なら、求める角に小さく印をつけます。面積なら、求める部分を薄く塗ります。証明なら「何と何が等しいと言いたいか」を一行書きます。図全体をぼんやり眺めるより、見る場所が決まります。
たとえば面積を求めるなら、底辺と高さが分かる三角形や四角形を作れないか、と考えられます。合同なら、比べたい二つの三角形を作る線が候補になります。ゴールが違えば、役に立つ線も変わるのです。
2 文章の条件を図へ移す
次に、問題文に書いてある条件を図へ書き込みます。「AB=AD」なら二つの辺に同じ印。「ABとCDが平行」なら同じ矢印。「MはBCの中点」ならBMとMCに同じ印をつけます。
ここで注意したいのは、見た目だけで条件を増やさないことです。直角に見えても、直角の印や条件がなければ90度とは決められません。真ん中に見える点も、必ず中点とは限りません。
書き込んだら、「等しい辺が二組ある」「平行な線がある」と声に出してみます。言葉にできないときは、補助線を探す前に条件を拾うところで止まっているかもしれません。
3 「作りたい形」から一本を選ぶ
補助線の候補はたくさんありますが、最初は次の三つを試すと整理しやすくなります。
- 点と点を結び、三角形に分ける
- 垂直な線を引き、高さや直角三角形を作る
- 平行な線を引き、等しい角を見つける
全部の線を順番に引くのではありません。「面積だから高さがほしい」「等しい辺を使って二つの三角形を比べたい」と、目的を一つ決めて選びます。
引いたあとに「何が分かるようになった?」と自分に聞いてください。答えが出なければ、一度消して大丈夫。一本で解けることを競う練習ではありません。
例1 平行四辺形を二つの三角形にする
平行四辺形ABCDで、頂点は周りにA、B、C、Dの順に並んでいるとします。向かい合う辺の長さが等しいことを、三角形の合同で説明したい場面です。
ここでは、対角線ACを引きます。すると三角形ABCと三角形CDAができます。二つを比べると、ACは共通です。またABとCD、BCとADがそれぞれ平行なので、錯角が等しくなります。錯角は、平行な二本の線を横切る線があるときにできる、位置が対応した角です。
具体的には、角BAC=角DCA、角BCA=角DACです。これで「一組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい」という合同条件がそろいます。合同な図形の対応する辺は等しいので、AB=CD、BC=DAと言えます。
この線の理由は「対角線を覚えていたから」だけではありません。「共通の辺を持つ二つの三角形を作るため」です。解説を読むときも、線の場所と理由をセットにしましょう。
例2 面積の問題では高さを見える形にする
三角形ABCで、底辺BCが8cm、高さが5cmなら、面積は8×5÷2=20平方cmです。大切なのは、高さが底辺に垂直な長さであること。斜めの辺の長さを、そのまま高さにはできません。
図で高さが見つけにくいときは、Aから直線BCへ垂直な線を引き、交わる点をHと置きます。すると「必要なのはAHの長さだ」と目標が具体的になります。図によってHは辺BCの外側に来ることもあります。
ただし、線を引いただけでAHの長さが分かるわけではありません。問題にある長さや、すでに習った性質で求められるかを確かめます。補助線は答えを生む魔法ではなく、必要な量を見えるようにする道具です。
解説を閉じて「線の理由」だけ言ってみよう
復習では、完成した解答を丸ごと写す前に、次の三つを一行ずつ書きます。
- 求めたいものは何だったか
- どの条件を使いたかったか
- そのために、どこへ何の線を引いたか
さっきの例なら、「向かい合う辺の長さが等しいと示したい。平行の条件を使いたい。共通の辺を持つ三角形を作るためACを結んだ」となります。
翌日は線のない図を見て、同じ説明ができるか試します。答えの数値を覚えるより、線を選んだ理由を取り出せるかが確認になります。
線を引いても進まないときの戻り方
線が増えて図が見づらくなったら、最初の図をもう一つ描きます。元からある条件を青、試しに引く線を鉛筆などに分けると、何が確かな情報か分かります。
また、錯角、三角形の合同条件、面積の公式があやふやなら、その一つだけ教科書へ戻りましょう。補助線が苦手に見えても、実際には「線を引いたあとに使う知識」が抜けている場合があります。
先生に聞くときは、「全部分からない」より「ACを引くところまでは分かったけれど、どの角が等しいか分からない」と伝えると、必要な説明を受けやすくなります。
今日の練習は一問でいい
学習全体の進め方は、安城市の中学生向け数学学習ガイドにもまとめています。
教科書の解説つき図形問題を一問選び、最初は解説を隠します。「求めるもの」「問題文にある条件」「作りたい形」の順に確認し、線を一本だけ試してください。その後で解説と比べます。
線が違っても、すぐ失敗とは決めなくて大丈夫です。自分の線で何が分かるか説明してみましょう。判断できなければ、図を残して先生に確かめます。
条件を式へつなぐことも苦手なら、文章題で式を立てる4つの確認も参考になります。学習の戻る場所を相談したい場合は、入試準備ゼミや1on1の案内を確認してください。