「分かる」と「解ける」の間にある3つの差

数学で自力解答が止まる場所は、大きく三つあります。

1 方針を選べない

解説を見れば「連立方程式を作るんだ」と分かっても、問題だけを見たときに、その方針を自分で選べません。

2 手順の順番を取り出せない

何を使うかは分かっていても、「最初にどの式を書くか」「次に何を移項するか」が続きません。

3 少し形が変わると同じ問題だと気づけない

数字、図の向き、文章の順番が変わっただけで、習った解き方とのつながりが見えなくなります。

したがって練習も、方針、手順、別の形への適用を分けて行います。

3段階再現法の全体像

やることは次の三段階です。

  1. 見る:解説を読み、各行の目的を言葉にする
  2. 隠す:解説を閉じ、手順だけを再現する
  3. 変える:数字や条件が違う類題で同じ考え方を使う

米国教育省の学習ガイドでも、解法例を見る学習と自力で問題を解く練習を交互に行うことが勧められています。また、慣れるにつれて解法例の助けを少しずつ減らす方法も紹介されています。

大切なのは、いきなり「全部自力」へ飛ばないことです。

第1段階 見る――解説の各行に「なぜ」をつける

解説を読むとき、式を目で追うだけでは不十分です。

各行について、次のどれかを短く言います。

  • 何を求めるための式か
  • どの条件を使ったか
  • なぜこの計算をしたか
  • この行で何が分かったか

たとえば一次方程式で、3x + 5 = 20という式から次の行へ進むとき、「5を右へ移した」だけで終わらせず、xを含む部分だけに近づけるためと説明します。

図形なら、「この角が等しい」と読むだけでなく、「平行線の錯角を使った」「この二つの三角形の合同条件をそろえるため」と目的を言います。

解説を自分の言葉で言い直せない行には印をつけます。そこが、見れば分かるように感じていただけの可能性が高い場所です。

解説に線を引きすぎない

全部が重要に見えて、解説全体にマーカーを引いても、手順は取り出しやすくなりません。

印をつけるのは、多くても三つです。

  • 最初の方針を決めた場所
  • 間違えやすい変形
  • 答えへつながった決め手

この三つが、その問題の骨組みです。

第2段階 隠す――30秒だけ思い出してから見る

解説を読み終えたら、すぐ同じページを見ながら写すのではなく、解説を閉じます。

そして30秒だけ、次を思い出します。

  1. 最初に何をする問題だったか
  2. どの条件・公式を使ったか
  3. 途中で注意する計算は何か

思い出せなければ、解説を一度だけ見直してかまいません。目的は我慢比べではなく、記憶から取り出す練習を作ることです。

次に、白紙へ解き直します。

途中で止まったら、答え全部を見るのではなく、次の一手だけを確認してください。確認したら、また隠して続きを書きます。

この方法なら、「最初から最後まで解説を写す」状態から少しずつ離れられます。

丸つけは正解・不正解だけにしない

解き直した後は、次の三つで記録します。

  • A:方針から最後まで自力でできた
  • B:方針は出たが、途中で一回ヒントを見た
  • C:最初の方針が出なかった

正解でも、解説を見ながらならCに近い状態です。逆に計算ミスで不正解でも、方針と手順を自力で作れたなら、直す場所はかなり限定できます。

点数だけでなく過程を分けると、数学のケアレスミスが減らない理由とも区別しやすくなります。

解説のページをノートで隠し、白紙に解き直している中学生

第3段階 変える――類題で「同じ」を見つける

同じ問題を何回も解くと、答えの数字や式の並びを覚えて解けることがあります。

そこで最後に、数字や条件が少し違う類題を一問解きます。

ここで確認するのは正解だけではありません。

  • 元の問題と同じ考え方はどこか
  • 変わった条件はどこか
  • 最初の一手を同じにしてよいか
  • 途中で別の判断が必要か

たとえば方程式の文章題なら、登場する品物や数字が変わっても、「分からない量をxとする」「条件を等式にする」という骨組みは同じです。

文章から式を作るところで止まる場合は、文章題で式を立てる4つの確認も合わせて使ってください。

15分でできる実践メニュー

毎日の勉強に入れるなら、一問を次のように扱います。

0〜4分:解説を見る

式を追うだけでなく、各段階の目的を言葉にします。分からない行は飛ばさず印をつけます。

4〜5分:閉じて思い出す

最初の方針、使う条件、注意点を口に出すか、三行だけメモします。

5〜10分:白紙へ再現する

止まったら次の一手だけを見る。見た回数も記録します。

10〜15分:類題を一問解く

問題の見た目が変わっても同じ考え方を選べるか確認します。

五問を浅く写すより、一問でこの往復を作るほうが、「説明がないと始められない」状態を見つけやすくなります。

数字の違う類題を並べて同じ考え方を探している中学生

翌日と一週間後に短く再テストする

解説を読んだ直後は、内容がまだ目や頭に残っています。

本当に自力で使えるかは、少し時間を空けて確認します。

  • 当日:3段階再現法を行う
  • 翌日:元の問題か類題を、何も見ずに一問
  • 3日後:別の類題を一問
  • 1週間後:単元を混ぜた中から一問

間隔は絶対的な正解ではありません。大切なのは、忘れる前に読み続けるだけではなく、少し忘れかけたところで取り出す機会を作ることです。

翌日にCだった問題がBになり、Bだった問題がAになれば、解説への依存が減っています。

単元ごとに変えるポイント

計算

途中式を完全に暗記するのではなく、「何をそろえるか」「どの逆算を使うか」を言えるようにします。

関数

式・表・グラフのどこから何が読めるかを往復します。一つの表現だけを見て終わらせません。

図形

使った条件を図へ書き込み、「なぜその線や角を見るのか」を説明します。補助線は形で覚えず、作りたい三角形や等しい角から考えます。

文章題

計算前に、求めるもの、分かっている量、量の関係を分けます。式ができない問題に計算練習だけを増やしても解決しません。

やってはいけない三つ

解説を読んだ直後に「もうできる」と丸をつける

直後の分かりやすさと、翌日の再現は別です。丸は白紙で解いてからつけます。

一行止まるたびに答えを最後まで見る

必要なヒントだけ見て、もう一度自分で続きを取り出します。

難問ばかりで試す

最初は、授業例題から標準問題で行います。基礎手順を再現できないまま難問へ進むと、解説を読む時間だけが増えます。

同じ教科の記事は安城市の中学生向け数学学習ガイドにもまとめています。

まとめ

解説を読めば分かるのに自力で解けないとき、勉強量だけを増やす前に、解説との距離を変えてください。

  1. 解説の各行の目的を見る
  2. 解説を隠して手順を再現する
  3. 条件を変えた類題で使う
  4. 翌日と一週間後に再テストする

「理解したか」ではなく、「何もないところから最初の一手を出せるか」を基準にします。

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どの例題まで戻ればよいか自分で決めにくい場合は、ミライデザインラボの入試準備ゼミ1on1個別指導で、答案を見ながら学習手順を一緒に整理できます。

参考にした学習研究